相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で重度の知的障害者や重複障害者が殺傷されるという大変悲しい事件が起きました。
犯人は元職員の上村容疑者です。
彼は「障害者は生きる意味がない」と言い放ち、恐ろしい犯行に及びました。彼が「生きる意味がない」といった「重度知的障害者や重度重複障害者」とは一体どんな人達なのでしょうか?
今回は実際に障害者施設で働いている管理人が「重度知的障害者の特徴や生きる意味」等について紹介しようと思います。
なお、「重度重複障害者」について知りたい方はこちらの記事を参考にどうぞです。
→『重度重複障害者とは?施設で働いている人は大変なの?』
*この記事はあくまで管理人の経験を元に書かれており、全ての重度知的障害者や知的障害者施設、職員スタッフ、保護者に当てはまるものではありません。また、この記事を読んで不快になる恐れがある人は、読むのを避けてください。
重度知的障害者とは?特徴が知りたい!
知的障害者を簡単に言うと「知的な発達が成長の途中で止まってしまった人」の事を指します。体は年齢に合わせ成長しますが、心は子供のままです。某名探偵の逆バージョンですね。
んで、知的障害者でも「重度or最重度(重度より更に重い知的障害)」になると、「幼児以下の年齢で発達が止まってしまっている」と考えてください。
彼らの知的年齢は5歳~0歳のままです。
幼児ならご飯もお箸を使って上手に食べれないし、オモラシをする子もいます。うまく言葉で自分の想いを表現できずに癇癪をまわす子もいるでしょう。もちろん、子供によってはなんでも上手にできる子もいますが、中にはゆっくりと成長する子もいます。
これが赤ちゃんになるとご飯も自分では食べれないし、オムツもつけたまま。言葉もまだ喋れません。でも、笑顔は飛び切り可愛いです。
現在、小さな子供を育てているママやパパは想像がつきやすいのではないでしょうか?重度知的障害者は簡単にいうと、そんなイメージです。
ちなみにIQでいうと、重度知的障害者=IQ20~35、最重度知的障害者=IQ20以下になりますが、IQを測る知的機能検査によってIQの出方が異なるので、「大体このくらい」程度に覚えておきましょう。
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重度知的障害者の特徴は?具体的にどんな人なの?
では次に「重度知的障害者」とはどんな人なのでしょうか?彼らの具体的な特徴や生活の一部を紹介します。ただし、「重度知的障害者」といっても人によってできる事、できない事、性格等様々ですので、あくまで「私が出会った重度知的障碍者の一例」だと思ってみていただければ幸いです。
重度知的障害者の食事
基本的に身体障害はないので、私たちと同じような普通食を食べれます。が、中には咀嚼が元々下手な人、加齢に伴いうまく物を噛めなくなった人もおり、そういった人は刻み食等を食べたりもします。食べる時は自分でお箸やスプーンを使って食べる人、手づかみで食べる人、職員から食べさせてもらう人様々です(重度ならお箸を使う事も可能ですが、最重度になるとお箸は難しいです)。手づかみで食べる人の場合、納豆やカレーが出た時は要注意。
かなり汚い事になります。
考え方はそれぞれですが、納豆やカレーの時だけは職員が手助けしたりします。私が働いている施設では朝食に納豆がついてくる事が多いです。
納豆好きな利用者も多いので良い事なのですが、介助する職員としては複雑な気持ちになります。
重度知的障害者の排せつ
これも人によって様々です。オムツを付けている人もいれば、決められた時間にトイレまで職員が誘導したら自分で排せつができる人もいますし、ほとんど介助がいらない人もいます。たまに失禁・失便はある人もいます。
慣れれば昼間の失禁・失便は笑いながら処理できますが、夜勤中の明け方に布団内にされた失禁・失便はちょっとキツイものがあります。
あと、私は体験した事はありませんが、他職員で夜勤中に利用者から便を投げつけられた人もいます。スタッフ間では「伝説の笑い話」です。
重度知的障害者の移動
身体障害はないので、基本的に自分で歩いて移動する事ができます。重度障害者でしたら簡単な言葉が通じるので問題無いですが、最重度知的障害者の場合、職員の願う方向に歩いてくれるとは限りません。
特に新人スタッフは最初に「利用者が思う方向に移動してくれない」という壁にぶつかります。私にもそういった時期がありました。利用者との信頼関係が築ければ、自然と一緒に移動してくれるようになります。
とはいえ、興奮時は突然奇声をあげて、どこか遠くへ走り去る事があります。私の大好きな利用者(彼は中度の知的障害+自閉症スペクトラムでしたが)もよく大声を出し、どこかへ走り去っていきました。
余談ですが、彼とは1年くらいで両想いになりました。施設を辞めた今でも、たまに興奮すると私の携帯電話へ彼から電話があり、元気な奇声を聞かせてくれます(笑)
重度知的障碍者の入浴
お風呂自体は基本的に自分で入ってくれます。が、人によってはうまく髪や体を洗えないので、スタッフが一部介助します。顔を洗うのがキライな利用者とは戦いになります。
知的障害のみでしたら、基本的に女性利用者は女性職員、男性利用者は男性職員が対応します。入浴回数は知的レベルや施設の方針によって異なりますが、週4~7回くらいです。
ちなみに着替えも人によって全部手助けしたり、全く支援が必要なかったりします。あと、軽度の若い人は自分でオシャレな服を買ってきますが、重度の場合は職員が買ったり家族の方が買ってきたりします。
職員の趣味が悪いと(男性スタッフの場合特に)、「超ダサい格好」になります。
もう少し普通の服装をさせたいのだけど…お金の問題もあり(保護者が出してくれない場合もある。利用者のために国から支払われている障害年金はどこに使われているのでしょうか?)難しいところです。
重度知的障害者の意思疎通
重度知的障害者でしたら簡単な言葉は話せますし、会話も可能です。簡単なひらがなくらいなら読み書きできる人もいます。おそらく、あなたが想像している以上に、彼らは色々な事ができます。中度の知的障害以上になると2~3時間一緒に話しただけなら「どこに障害があるのだろう?」と疑問に思う人もいると思います。
数ヵ月くらい一緒に過ごすと「あぁ、こういう所が成長できてないんだな」と嫌でも思い知らされます。
知的障害者は、たとえ分からなくても「分かった」「はい」と答える人が多いです。おそらく過去の経験で「分からない」と答えるよりも「分かった」と答えた方が物事がうまくいくし、他者から怒られる事もないと学んだ結果だと思います。
障害者だろうが健常者だろうが「他者とできない事、できる事を比べる」のではなく、「過去の自分とできない事、できる事を比べる」ような社会になると、色んな人がもう少し生きやすくなるのかもしれません。
重度知的障碍者の趣味
これも人それぞれですね。ビーズを通すのが好きな人、雑誌をめくるのが好きな人、カラオケやボーリングが好きな人、野球が好きな人…私たち同様色々な趣味の人がいます。ちなみに上の方で少し書いた「私が好きな中度知的障害者の利用者さん」は1ヵ月に1度、街に1人で外出し
1人ボーリング&1人カラオケを楽しんで施設に帰ってきます。
おそらく店員さんからは「あのオヤジまた来たよ」と陰で話題になっている事でしょう(見た目は完璧にちょっと変わったオジサン)。
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重度知的障碍者の生きる意味って?
「障害者は生きる意味がない」植松容疑者はそう供述しています。重度知的障害者は確かにできない事が多いです。
小さな子供のまま知的発達が止まっているのだから、日常生活を一人で過ごすのも難しいし、騒ぐとうるさいです。体は成長しているので、興奮すると手が付けられない程暴れる人もおり、止めに入った職員が殴られる事もあります。
私だって利用者にムカついた事は何百回もあります。
でも、だから何だというのでしょうか?
健常者であっても多かれ少なかれ「できない事」はありますし、ムカつく人だってたくさんいます。
そもそも人に「生きる意味」という物は必要なのでしょうか?
例えばあなたは自分の「生きる意味」を答える事ができますか?答えられない人もいるのではないでしょうか?
障害があってもこの世に生まれてきたという事実には変わりなく、保護者や施設職員にとっては「かけがえのない命」です。もし突然彼らがいなくなってしまえば、保護者や職員はきっと悲しい想いをするでしょう。
健常者であろうが障害者であろうが、いなくなると悲しい想いをする人がいる。
それだけで十分「生きる意味」はあるのではないでしょうか?
もっと生々しい現実を知りたい人はこちらの記事をどうぞです。
→『障害者施設の闇 劣悪な職員待遇の実態!重度・重複障害者介護の厳しさとは?』
重度知的障害者とは?特徴や生きる意味まとめ
いかがだったでしょうか?重度知的障害者は「心の成長が幼児以下の年齢で止まっている人」と考えると、イメージしやすいと思います。彼らは彼らなりに一生懸命に生きており、誰も彼らの命を奪う権利はありません。
今回のような「障害者殺傷事件」が二度と起きない事を強く祈ります。