平成28年6月26日に神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で障害者の殺傷事件が起きました。
犯人の植松聖容疑者は「意思疎通がとれない重度の知的障害者や重複障害者」を狙って攻撃したと供述しています。ここで出てくる
「重度重複障害者」とはどのような人達なのでしょうか?
今回は実際に現場で働いている管理人が「重度重複障害者の特徴や実際の生活」についてまとめてみました。その他、「障碍者施設で働いている人の悩みや苦労、大変さ」も一緒にまとめていますので良かったら参考にしてくださいね。
*この記事はあくまで私個人の体験をもとに書かれており、全ての重度重複障害者、障害者施設やその職員に当てはまるものではありません。また、この記事を読んで不快になる恐れがある人は読むのを避けてください。
重度重複障害者とは?特徴は?
重複障害者の定義は?
まず、重複障害者とは「視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱」のうち2つ以上の障害を合わせ持つ障害者の事を指します(*学校教育現場上の場合)。超有名人でいうと、視覚障害、聴覚障害があった「ヘレンケラー」も重複障害者の1人です。
んで、これが「重度重複障害者」になると、「重度の知的障害(発達障害)を伴う重複障害者」になります。福祉現場では「重度の知的障害と肢体不自由」の2つを持った人を指す事が多いです。
ちなみに、植松容疑者が襲った「津久井やまゆり園」は知的障害者施設ですので、軽度から重度(最重度)の知的障碍者が生活していたはずです。
植松容疑者が指していた「意思疎通の取れない人」や「重複障害者」は「重度の知的障害者およびに重度重複障害者(重度知的障害+何らかの身体障害)」の事を指していたと推測されます。
その「重度知的障害者」について詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてください。
→『重度知的障害者とは?特徴やリアルな生活の様子は?生きる意味はあるの?』
重度重複障害者の特徴は?どんな人がいるの?
それでは、重度重複障害者とは一体どんな人で、施設でどのような生活を送っているのか、その一部を紹介しますね。が、一言に「重度重複障害者」といっても人それぞれ障害内容や障害の程度が異なるので、「全員同じ生活をしている」というワケではありません。
それぞれの障害レベルや趣味嗜好に合わせて「活動内容」や「介助内容」が変わってきます。ここではあくまで「こういった人もいる」という例を紹介をしているだけですので、その点は注意してくださいね。
重度重複障害者の食事
ほとんど全介助で施設職員がスプーンを使って食べさせます。食べ物をうまく噛めない人が多いので、食べるものは流動食やゼリー食が主ですが、軟食やキザミ食を食べれる人もいます。人によってはペグを使って直接流動食を胃に流し込みます(この場合、看護師が行います)。ゆっくりと一人一人食事介助を行うのが理想ですが、少ない職員で決められた時間内に食事を終えないといけないので、
かなり早食いをさせてしまう場合が多いです。
利用者の皆さんには申し訳なく思いますが、ここら辺は調理場やその他活動の時間との兼ね合いもあり難しい問題です。
重度障害者の排せつ
基本的にオムツ介助です。私が働いている施設では「嫌なことがあると、便がついたオムツを振り回し、あたりに便が飛び散らせ遊ぶ」という利用者がいます。最初見たときは衝撃的でしたが、慣れたら平気です。
というか、オムツを振り回す予兆が現れたら、全力で機嫌を取って阻止します(笑)
余談ですが、彼女は介助抵抗が激しい利用者なのですが、2年ほどかけて超仲良しになりました。最初のうちは食事介助で配膳をひっくり返され、オムツ介助をしようとするとなぎ倒され…としていたのですが、今では全く抵抗されません。
むしろ、私が近くにいくとコロコロ転がりながら寄ってきて、言葉は話せませんが、膝枕&耳かきを要求してきます。こういったところが障害者施設で働いている人のやりがいにつながります。
重度重複障害者の移動
基本的に車いすで移動します。身体障碍の程度によっては、地面をはって移動したり、コロコロと横に転がって移動できる人もいます。ちなみに、軽度の知的障害+肢体不自由の場合は、電動車いすでスイスイ移動です。カッコいいです。
重度重複障害者の入浴
基本的に全介助です。首に永久気管孔(息をする穴)がある人は、その中にお湯が入らないように注意しないといけません。また、体格が大きい人は重いので本当に大変です。というか、太っている人は全力でダイエットをして欲しいと思う瞬間です。
ちなみに入浴の回数は施設の方針に寄って異なりますが、重度重複障害者が入所する施設だと週2~5回くらいです。夏場は特に「もっと入浴の回数を増やしてあげたい」と思いますが、そうなると遊びや散歩等の「活動の時間」を減らさなければならなくなります。
「活動の時間」の方を楽しみにしている利用者さんも多いので、難しい問題です。
重度重複障害者の意思疎通
声を出す事はできますが、言葉は喋れない人が多いです(簡単な単語を話せる人もいます)。が、簡単な意思表示は可能です(中にはどうしても意思疎通が難しい人もいますが…)。というよりは、私たちが読み取れないだけであって、彼らは彼らなりの意思表示をしっかりとしています。
「重度の重複障害者が出してくれている小さなサイン」をいかに見逃さないかが、施設職員の腕の見せ所です。サインが分かるとかなり嬉しいです。
重度重複障害者の趣味
これも人によって様々です。音楽を聴くのが好きな人もいれば、散歩するのが好きな人、TVを見るのが好きな人、食べるのが好きな人もいます。職員スタッフの仕事を手助けをする(逆に邪魔している時もありますが/笑)のが好きな人もいます。ありがたい話です。
重度重複障害者は恐い?
重度重複障害者は「身体障害」を伴う事が多いので、こういう言い方はアレですが、あまり自由に動けません。ですので、障害者から大きな暴力を受けるという事はまずありません。
そりゃあ、人によっては噛まれたり、介助しようとすると手で払いのけられたり、唾を吐きかけられたりする事ならありますが、それは支援者の対応が悪いのが原因です。普通に接しさえすれば、噛まれる事はありません。
「障害者は怖い」というイメージを持っている人もいますが、彼らは全く怖くないですよ。安心して大丈夫です。
障害者施設で働いている人って大変なの?
重度障害者施設で働いていると、たまに友達から「重度だと大変でしょう?」と言われますが、私的にはそんなに大変じゃないです。
それよりもむしろ、普通に働いているサラリーマンの方がもっと大変なイメージです。とはいっても、これは「向き不向き」があるので、感じ方は人それぞれだと思います。
確かに最初に働き始めた時には色々とショッキングな事が多いですが、
・オムツ交換
・入浴介助
・食事介助
ここら辺はすぐに慣れてしまいます。最初は「汚い&臭い」と思っていた便の処理も平気になります。が、敢えて「重度重複障害者支援で大変だなと思う事」を述べるとすると、
「高い意識で仕事を続ける事」
でしょうか。重度重複障害者の中でも「特に障害が重い人」の毎日は、乱暴な言い方をすると「変化のない日々の繰り返し」です。こちらが何をしても反応が返ってこない人もいます。反応が無い人と一緒に散歩に出かけ、毎日毎日笑顔で話しかけ続けなければいけません。
最後には虚しさを感じてきます。
そういった方の場合、家族も沈黙に耐えられないのでしょう。面会に来たとしても10分程度で帰る人が主です(面会に来ない家族もたくさんいます)。
気分転換をうまくできない人には向いていない仕事かもしれません。
ちなみに私がこの仕事を辞めずに続けられるのは、「利用者」の存在があるからです。心が疲れて荒れてしまった時、その心を癒してくれるのも利用者です。
中々心を開いてくれなかった人が、笑顔を向けてくれるようになった時の喜びは、他の仕事では味わえないですよ(*´ω`*)
もっと「ぶっちゃけた障害者施設の実態」を知りたい人はこちらの記事もどうぞです。
→『障害者施設の闇 劣悪な職員待遇の実態!重度・重複障害者介護の厳しさとは?』
重度重複障害者とは?まとめ
いかがだったでしょうか?重度重複障害者とは2つ以上の障害を持っていて、かつ重度の知的障害がある人達の事です。彼らはできない事も多いですが、できる事だってたくさんありません。
私たち同様に尊い命であり、決して他人から簡単に奪われてよい命ではありません。相模原市殺傷事件のような痛ましい事件が二度と起きない事を祈っています。